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OMM= Oriniginal Mountain Marathon;ナビゲーション、フィジカルが問われるビバークをともなう2日間のレース
チームメイトのリーダー村越より
週末、イギリスで開催されるOMM(original mountain marathon)に参加してきた。
興行的に成功するなら、もっと楽に、楽しくできるだろう。だが、それをしないところにこのレースの真価を感じる。
OMMでは二日間のレースの間の夜を、レース中自ら運んだ装備によって乗り切らなければならない。レースと同じ風雨の中でテントを張り、十分とは言えないスペースの中で、夕食を取り、また翌日の厳しいレースに備えてしばしの休息を取る。レースが終わったら暖かいシャワーでも浴びて、ビールでも飲みながらレースを振り返りたいところだが、その楽しみはもう一日先延ばしだ。だが、この過酷さこそがOMMの重要な要素なのだろう。
そもそも、アウトドアに出るなら秋は決していいシーズンとは言えない。天候は不順だし、西風が吹き荒れる。アウトドアを楽しめるもっとよい季節があるだろうに。主催者が「そうだ」と言ったことはないが、過酷な天候もOMMの要素の一つなのだ。走り回るフィールドも、ヒースと湿地が邪魔をして、見かけほど走りやすい訳でもない。コースは決して楽で楽しく走れるところだけを用意してくれるわけではない。時には霧でホワイトアウトする霧の中をナヴィゲーションするには、身体的にも精神的にもタフさが要求される。
多くの人にとって、イベントでもなければ自ら身を置こうと思わないような過酷な環境と状況にチャレンジできること、そこにOMMの本質的な価値がある。その背後には、七つの海を制覇した大英帝国、あるいはスコットやシャクルトンを輩出したイギリスのアウトドア文化を垣間見ることができる。
1 出場まで
マウンテンオリエンテーリングがノルウェーやイギリスで盛んだと知ったのは18歳のころだった。
その1つとしてOMM(オリジナルマウンテンマラソン)がイギリスで開催されている、、というのはOMM JAPANのスポンサードである相馬さんのFacebookによる書き込みから知った。もともとOMMのブランドは日本に入る前から知っていたがナビゲーションを含むレースまでやっているのは知らなかった。
何気なく、”それマウンテンオリエンテーリングですね、楽しそう”と書き込むと相馬さんから一緒に出ましょうとコメントが返ってきた。冗談だとやり過ごしていたが、彼は本気だったようで、荷物は全部持つからナビゲーションをしてくれと着々と話が進んでいく。光栄なお誘いだが、日本のトレイルラントップアスリートとして、せっかくなら男子チームで世界と戦うほうがさらにモチベーションとやりがいがあるだろう。競技者ならそう思う。誰か他にいないだろうか?頭に浮かんだのは同じTEAM阿闍梨メンバーの柳下くんだった。
1月の有度山トレイルランでOMM日本代理店のNomadicsさん、相馬さん、柳下くん、村越さん、田島で会い話を進める。ここで相馬&柳下チームの誕生、気を使っていただいたか村越&田島チームも出来上がり、招待チームとしてくださることになった。
とはいえ、私と村越さんは8月にアメリカのサウス・ダコタで行われるロゲイニング世界選手権にベテラン混合で3位入賞のターゲットを置いていたので、さすがに10月末の遠征は勤め先が年度末のため休暇を取ること、金銭的に厳しいとと消極的だった。村越さんも同じような理由で出場を見合わることで落着いた。しかし、しばらくしてこういった機会はこれから先ないかもしれない、18の頃あこがれていたレースに出られるチャンスがあるのならやはり出たほうがよいのではないかと考え直しその想いを村越さんに伝えると、村越さんも同じように考えていたようだった。結局6月ごろ最終的に行くことを決める。
そして7月末相馬さんの遭難だ。ショックを受けるとともにわたしたちは今一度Nomadicsの方々に相談した。”2ndチームのわたしたちは参加すべきなのだろうか”、それに対し代表である千代田さんは、”ぼくが相馬剛だとしたらとこう言うと思う”、と話してくれた。彼らの、今もスイスから帰ってこない相馬さんに対しての公のアクションは見られない。けれども短い期間ではあるが相馬さんとの関係はものすごく蜜なのではないだろうか。
結局私たちは出場することを決めた。それがアメリカへ出発直前の8月2週目ごろだった。
ここまで出場に対してスムーズに行かなかったレースは今までないだろう。だからこそ今回特別なものになる。
またOMM JAPANレースの競技方面の運営を任されていたため、”視察”という点でも重要だった。フライトのトランジットではジャパンレースを取り仕切る小峯さんと打合わせをしていた。
コンディションについては8月のロゲイニング世界選手権までも厳しい状況だったが、それ以降も多忙が続き、週末に長い時間ザックを背負って行動する練習が一度もできないままだった。山へ行くことすらできない。1つのトレーニング指針の目安となる月間走行距離についても100kmにさえ満たず(トレーニングがきちんとできている時は200-300km)、厳しいレース展開になることは予想できていた。この点についてはチームメイトである村越さんに事あるごとに報告しお互いの状況把握をし、チームとしてどうゴールセッティングをしどう臨むかを話した。
2 現地にて
20年以上もオリエンテーリングの海外遠征、レースをこなしていると、多少のトラブルがあっても気にはならない。休みの関係から現地入りはレース2日前の夜、前日に装備の準備とレジストレーション、そして翌日から2日間のレースと最短スケジュールにせざろう得なかった。
唯一懸念していた主催者からテントを借りることについては、Nomadicsさんが手配をしてくれ、空港にオーガナイザーがNomadicsさんたちを迎えにきたときに渡してもらい事なきを得た。これで事前にどんなテントかがわかり張る練習もパッキングもできる。
必要な食料、水については地元のスーパーで調達。きちんと食べたい食料については日本から持参。いずれも相談の上、村越さんが購入。
時差ぼけについてはどうせ2日間過酷なレースになるのだからと気にしない。一番心配していたのは寒さだった。
日ごろの過労からかレース前日昼から体調が悪化し発熱。そのまま無理をしてHQ(Head Quarter/Event Center)のレジストレーションにいき、夜は外食せずリーダー村越がおかゆをつくってくれ眠り続けた。
レース前日、会場はNorhtunderland National Park麓にある小さなB&B。2Fがレジストレーション。1Fにはショップが作られ、ガスや服など必要なものがそろう。
3 装備・食料
なるべく軽量化し工夫するのはみな同じだろう。悩みどころだ。食料、その他について村越さんと飛行機の中からプログラムを熟読し、事前確認、パッキングしながら、余計なもの、必要なもの、ダブリがないよう話しながら決めた。共通の装備、食料については村越さんが持った。
一番気になっていたのは寒さだ。この周囲の気温は10度前後。国立公園の山間地は10度をきっているだろう。その中を35㎞、10時間近く移動する。いったいどんな状況になるのか、想像を働かせて着るものの準備するしかない。幸い24時間寒い雨の中のロゲイニングを2度、日本の11月始めに深夜に七面山スタートで安倍奥山塊ー静岡縦走の22時間/54㎞、標高2000mまでを経験しているので、おおよその見当はついた。その時の装備などを元に準備した。
共通の装備・食料
テント(NORDISK Teremark 1) 770g
とてもではないが強風と雨、寒さの中ツェルトは無理。強風は日本のそれとは違い台風なみの風速20.30m/h。テントじゃないと無理と出国前に小峯さんよりアドバイスされる。主催者から借りたテントは1人用のようだったが充分2人でも快適に眠ることができた。前室もあり調理をするのに助かった。困ったのは内側にメッシュだけの部分があり風が入り込んできたこと。しかたないのでビニール袋を貼り付けて風が入ってこないようにした。
(トイレット)ペーパー
テーピングテープ
三角巾
バンソウコなどバンテージ類
胃腸薬、頭痛薬、ワセリン
アーミーナイフ
食事
1日目夜
アルファ米2-3 レトルトカレー、さばの味噌煮(コンビニで売っているパックの1匹分)、ドライ豚汁、インスタントコーヒー
2日目朝
アルファ米2-3、ミートボール、鰯のパック(コンビニで売っているパックの1匹分)、ドライの味噌煮込みうどん、ドライ豚汁、フルーツポンチ(夜食べず朝)
予備
アルファ米2、豚汁
記憶がすでに定かでないが、疲労していても食べやすいものを、たんぱく質をきちんと取ること、温かい飲み物、などを用意。
デザートはサプライズ。いつも山へ縦走に行くとデザートを持っていきたいという私と、そんなの重いからいらないというリーダーとで険悪な雰囲気になるのだが、なんとフルーツポンチのパックを用意していた。嬉しいけどやはり重いのでは。。。
ゴミはテント泊地に捨てることができたので助かった。ジャパンレースではゴミ箱は用意されていないことからごみの持ち帰りは必須。この量はバカにならない。食料、パッケージについても工夫がいるだろう。
個人 食料
水 2.5l 特に味付けなし
ランチパック(パン+チーズ+ハムのサンドウィッチ) 2つ
ふりかけを入れたアルファ米 1パック
ショートブレット 6個?
ドライフルーツ コンビニで買った適当なもの
柿の種
プロセスチーズ6個(スーパーで6個いりぐらいで縦長にして売っているもの)
チーズかまぼこ 3本
チョコレート 適当
ショートブレットは2010年のN.Zロゲイニング世界選手権で大活躍したので現地で購入して使う。
追い込んで走るのでなければ、無駄に加工したもの(ジェルやお菓子)より、普段口に入れているもののほうが胃も受け付け気分もよい。よってサンドウィッチを作り、アルファ米をメインにし適当にピックアップして持っていった。
また疲れてくるとかむのが面倒になるので、チーズやチーカマは食べやすくかつ高カロリーなのでよかった。
1日目水は結局1lしか飲まなかった。
基本の服装
アンダーシャツ(ファイントラック;フラッドスキンメッシュの半袖Tシャツ)
ベースレイヤー長袖ジップシャツ(TRIMTEX FLEXシャツ 96%ポリエステル/4%Elastan 生地は少し厚手、メリウールと同じくらい暖かい)
ロングタイツ(TRIMTEX Advanceタイツ)
ロングパンツ(TRIMTEX Trainer TXパンツ) ー>タイツの上にはくオーバージャージ的なもの。タイツが熱ければ1枚ではくことができる
ジャケット(Kamleika/OMM) ->Nomadicsより提供していただいたもの
グローブ(OMM) ->手に
ビーニー(インナーフリース製 TRIMTEX) ->頭に
チューブバンダナ(TRIMTEX)ー>首に
靴下(ウール)
Goretex packliteのパンツ(ホグロフス) ->必須装備、2日目のみ着用
着替え+予備
パンツ、ウールの靴下、メリウールのベースレイヤー(icebreaker)、薄手のダウンジャケット(TRIMTEX)、ウールの薄手ハイネックセーター(ユニクロ)、GORETX pacliteのジャケット(Arc'teryx)、
レース中動いている分には雨も寒さもウェアの準備していれば、またレース中補給していれば熱エネルギーを作るので問題はないだろう。体感温度を低くする風は要注意。
ポイントはテント内で快適にいられる服装にしておくこと。タイツやその上から履くロングパンツは1,2日目と同じにする。2日目の着替えの時覚悟を決めればよい。どうせ汚れるのは一緒だ。テント内では使わなかったゴアテックスのパンツをパンツの上からそのまま履いて過ごす。ブラジャーはなくてもすごせてしまう体型。この点は残念ながらも軽量化にちょっとだけ一役買っているかもしれない。
誤算はハードシェルを2つ持っていたこと。これは事前にジャケットKamleika/OMMをテストする時間がなくぶっつけ本番、どこまでハードな環境に耐えられるかわからなかったため、念のためにとPacliteのジャケットを持っていってしまったのだ。これだけで350gは減らせる。結局は十分Kamleikaで対応できた。そしてこのジャケットものすごくいい。
ミッドレイヤーのジャケットは別に用意していのだが、思っていたより重く感じる。出国前日に駅構内に出店していたユニクロで急きょウールの薄手のハイネックセーターを購入しそれを使うことにした。こちらのほうがかなり軽い。ハイネックセーターとダウンジャケットを着て、さらにカッパをきれば暖かい。実際2日目はこれらを着たまま行動した。
とにかく体の末端を冷やさないように注意した。手袋、首回り、耳、頭はレース中はいつも防御し暖かくした。
ロングタイツは多く出回っているLyclaの生地とは違い、TRIMTEX独自に展開している生地で(60% Polyamid 40% Elite)、ピタッと張り付かず締めけず、やわらかくものすごく着心地がよいので愛用している。来期より取扱い再開予定。
1つ工夫するとすれば、シューズはドロドロなままなので、テントから外に出てトイレに行くときにそれを履いていくのが躊躇される。他チームは足の上からビニール袋を履いて足に靴の汚れ、冷たさを感じないようにしていた。なるほど!私たちもコンビニ袋で代用。日本大会でも天候が悪化し靴がびちょびちょな場合があるかもしれない。その時に代えのビーチサンダルなど持っていく人はいるのだろうか。普通のビニール袋で代用できるのがよい。準備しておこう。
他装備 必須装備は省く
ザック32l inov8 レースパック
シューズ inov8 trailroc 255
コンパス モスクワコンパス2L
プレートコンパス タイプ3
マイクロレーサーコンパス(予備) SILVA
ヘッドライト ジェントスHW777
ヘッドライト(予備) ペツル e-lite
歯ブラシ(歯磨き粉を練り込み済)
てぬぐい1枚 あらゆる使い方で便利
リップ
時計(CASIOプロトレック CASIOより提供)
寝袋(OMM マウンテンライド1.6)ー>Nomadicsよりサポート
http://moonlight-gear.com/?pid=57574420
銀マット 約60cm x 60cm --適当に切った
SOL
ハイドレーションは使わず500mlと2lとオプティパスのパックに分けた。
夜の行動はあまり想定していなかったのでハンドライトは携帯していなかった。
新調した寝袋はぶっつけ本番。中にあるだけのものを着る、上からかける。テントのベースシートにはSOLを引き、60cm四方に切り刻んだ銀マットを引く。背中と腰をカバーしていれば問題ない。その他の部分はザック、着替えパックなどで枕やクッションとして使えばいい。軽量化できる。
歯ブラシを持っていくのはリーダー村越からやめろと言われたが、歯ブラシとパンツだけは譲れないといい、歯磨き粉を練り込みビニール袋に入れていくことでよしとなった。それくらいシビアに軽量化について取捨選択をした。
これらでだいたい6㎏程度。食料、そこから食料、水以外余計なものはほとんどを村越さんが持ってくれた。減らすとすればPACLITEのジャケット、水500gで850gは軽くできるだろう。