JR東日本大人の休日倶楽部地図とコンパス講座の3回目はコンパスの使い方

 

この講座は前任の村越さんのアシスタントを経て8年目に入ります。

里山での地図の読み方、コンパスの使い方を習得するために6回に分かれた座学とフィールドワークをそれぞれ2時間。50歳以上の、中には80歳代の方までいらっしゃって、いくつになっても勉強熱心さには頭が下がるばかりです。私も刺激を受けながら少しずつ工夫してきました。

講座の内容 *これは基礎編でステップアップに中級編3回がある

1 概要と地図のお約束(地図記号、縮尺、磁北線など)

2 等高線と地形

3 コンパスの使い方(野外)

4 総合的に地図を読む

5 事前の計画を立てる

6 フィールドで実践(野外)

 

 

山登りを楽しむ人、里山歩きや街歩きを楽しむ人、ブラタモリを見て地図に興味を持った人など様々な動機を持つ方々がいる中で、どのような設定を用意するかは毎回考えどころです。全てのかたが体力があるわけではない、アウトドアに詳しいわけではない。里山に実際行けば簡単なことも制約ある中でどうするか。こういう状況はかえってモリモリしチャレンジングな気持ちになります。

 

今回はコンパスの使いかたを学び、外で実践する3回目の回でした。

 

場所は光が丘公園。パークオリエンテーリングの地図もある、緑多く気持ちの良い広い公園です。じつは都内でも実践できるとっても良い場所。ピーク、尾根、谷、鞍部がある!!山へ行かずとも地形やコンパスワークができる!

自分の身長を30cmにしてみるととてもハードな山域になるのですよ。。地図は国土基盤地図情報(国土地理院)のデータを取り込んで作りました。

 

どのような地図を使ってどのように実践したかを紹介します。(地図の画質は落としています)

 

まずは集合場所(◎)から△までa-b-c-d-fと移動していきます。約800m。過去2回学んだことの復習をしながらです。地図から目的地(〇の中心)はどのような地形かを読み取る。距離はどれくらいか。方角は?そして実際の地形や斜度を確認しながら進んでいきます。ちなみに等高線間隔は1m!です。

 

その前に簡単にコンパスの持ち方、使い方を学びます。

・コンパスはお腹の前で地面と水平に持つこと。

・一番大切なのは磁針の赤いNが北を指すこと。それにより他の方角もわかる。プレートコンパスにある周りの目盛りや下の矢印は気にしない、とにかくこの磁針に注目することが大切。その後、実際指示した方角に体を何回か向けてみて方角を意識することをやります。

 

次に、地図を見て、これからいく場所〇(a)がどの方角にあるかを読み取る。西に行くことを読み取ったらコンパスを使って西に体を向けてみる。その時顔を上げていく方角を確認することが大切。そして進行方向の前側に地図の西を持ってくると、地図で見えるものと実際に見えるものがすぐに対応しやすい。これが整置。この時点はあまり磁北線と磁針が並行にすると強くは言いませんが、結果的にそうなりますよと伝えました。

 

ここでの地図の工夫は東西南北をあらかじめ書き入れていたことでした。パッと見て地図から方角を読み取ることが難しいかもしれないからです。この書入れにより整置することの意味づけがわかりやすくなったようでした。

 

いよいよa, b, cの順に歩いてきます。過去2回でやった地形、縮尺から距離を読み取ること、等高線の間隔で斜度がわかる、それをおさらいしながら、地形、方角、距離を読み取り、実際進む方角はどっち?を繰り返しました。ちなみにcには滝まであった!尾根の分岐もあるし。

 

あまり整置することにフォーカスせず、進むべき方角を読み取るー>その方向をコンパスで確認して体を向けることを意識づけました。プラス余裕あれば地図も合わせるという感じです。

 

ここで1時間経過し、休憩約10分。

 

次の課題は、徹底して整置をしてコンパスワークの練習です。地図には建物などもありますが排除し、道のみにし、一部交差点ではそれも書かず。東西南北はここでも入れました。

 

この講座のアシスタントはオリエンテーリング界のレジェンド、高橋厚さん(多摩OL、御年95歳か、マスターズ世界選手権のスプリントで世界チャンピオンにもなっている方です!子どものころからお世話になっています)。1グループを高橋さんにお任せし2グループに分かれて実践です。

 

△から時計周りで北の徒歩道を通ってまた戻ってくるコース。

現在地を把握しつつ、進むべき正しい方角はどちらかを選択して進んでいきます。

 

 

徒歩道に入る南側のY字の分岐は、すぐに判断をしずらいですが、磁北線があることで正しく行く方角がわかるので、地図上に磁北線を入れておくことは大切と前回話したことを実感していただいたようでした。

 

途中、歩測などもやってみました。トップの木陰の写真はその様子なのです。

 

ちょっと駆け足でしたが約30分、約500mの距離

 

最後の課題は、最初にやった地形+次にやったコンパスワークの両方使って、集合場所に戻るもの。地図もそれっぽくなってきました。

受講者のどなたかから、わかりやすい!!との声がありました。20分、約800mの距離。

 

ただ、道をたどっていきますが、その間道の分岐や交差点などあるもののそれは排除。正しい道をきちんとコンパスを使って選んで進みます。それだけだと不安なので、目印になる地形も一緒に確認しながら、それから距離も頭にいれて進みましょうと、それぞれ1人で行くように指示。

 

最初は不安そうだったみなさんも、次第に慣れてきたかずんずん進んでいきました。方角が変わるたびにきちんと整置もできていました。素晴らしい!

 

そんなこんなの2時間で、最後の地図目的地に行くのに必要そうな情報をピックアップしたものであること、でも実際はもっといろいろな情報がある。次の回からは自分でわかりやすいものを見極めてピックアップして目的地に行くための事前計画を立てる練習をしていきましょう、と話しておしまい。

 

なんとなく知っている、本で読んだコンパスの使い方は、やはり実践してみることで理解が深まります。山へ行かずとも工夫すれば公園でもできそうです。(正確な地図の用意は大切)

 

一方、実はコンパスの使い方を教えることは、講師からしてみると案外難しく、”整置”をどのように教えるかは、今現在でも試行錯誤。師匠の村越さんや仲間と情報共有することも多いし、ナヴィゲーション・インストラクター養成講座やOJTでは必ず話題になります。オリエンテーリングなら磁北線と磁針を合わせればいいんだよで済み、自然と身についた者からすると、言語化、段階を経たやり方はきちんとしていかないと、かえって混乱を招きます。地図を回すの?自分の体を回すの?(オリエンテーリングは瞬時に両方をやっている。)

 

最初のみなさんの様子から大丈夫かな?と思っていたものの、最後はみなきちんと整置をしてできていたので、理解度は高かったようです。

 


公園というアウトドアフィールドとは少し離れていますが工夫すればできるし、こんなやり方をしたよ、ということで共有しました。